昇陽窯 大上裕樹
丹波焼の伝統技法である「鎬」から着想を得た、「鎬貼付け」というオリジナリティ溢れる表現方法を確立。単純な図形に凹凸をつけ連続して組み合わせ、配列を展開することで、無限の模様展開が見られる。繊細な技法の中に独自の世界感と可能性を感じる作品です。
あれもこれもやってみたい。常に前進する心。
祖父の代から続く陶芸の家に生まれ、幼い頃からその世界に触れてきた大上裕樹さん。丹波から離れ、金沢市に4年、名古屋市での3年の修行のなかで、陶芸だけではなく漆や染め物、加賀象嵌など様々な伝統技法に挑戦されたそうです。その後も世界各国を旅して色々な文化を目にしてこられました。各地で経験したことを素直に吸収する柔軟性と、それを作品に活かしていく想像力が大上さんの作品にみられる多面性と独創性を作り上げているのかもしれません。
丹波であり、自分である。そんな作品を作りたい。
自分しかやっていないことをやる。それがモチベーション。」そう語る大上さんの作品には、丹波焼の古くからの技法である“鎬(しのぎ)”から試行錯誤を繰り返し生み出された、大上さんオリジナルの“鎬貼付け”技法が用いられています。1つの作品を作るのに、通常の5~10倍の時間が必要とされる繊細かつ複雑なこの技法、そこには、一人の陶芸家として他の人がやっていない新しいことに挑戦したいという思いと、代々受け継いで来た丹波立杭焼の伝統を守っていきたいという思いが込められています。「丹波の長い歴史の中で、丹波の技法から自分だけのものを生み出すことで、これからの丹波焼を担っていきたい。」と仰る大上さんの作品には、まだ見ぬ未来への無限の可能性を感じます。